2022年09月17日
オールドスクール装備な腕時計 2

前回の記事では現在でも新品で手に入る90年代前後に発売されたCASIOの現行機種について書きましたが、『どうせなら当時に生産された腕時計を着用したい』と思うコレクターも多いと思います。
今回は80年代に実際に使用されていた今でも入手できそうな時計を特定したいと思います。
前回も書きましたが、樹脂製のベルトやベゼルがあると経年劣化で砕けるため、当時品を実用したい場合は金属ベルトで樹脂を使用していない腕時計を入手できれば良さそうです。
というわけで金属ベルトの腕時計を使用している写真を用意しました。

1983年、ハワイで撮影された第25歩兵師団の写真です。なんとなくCASIOっぽいデザインの腕時計を使用しています。
上下に白の印字で飛び出したボタンがないデジタル腕時計ということでB-815と特徴が一致すると判断しました。

1982年のカタログに掲載されている古いモデルです。先程の写真の左腕部分を90度回転して拡大して比較してみます。

各部のデザインもですが、ベルトの形状も一致しますね。B-815だと思います。
B-815は当時3000円前後で販売されていた"B"系の腕時計です。(他にもアラームクロノグラフを備えた"A"やウォータースポーツ向け"W"など色々ありました)
いわゆる普及機で、他のモデルに比べると元々の価格帯が低めだったからなのか、ウォータースポーツやメロディアラームのような定価を超えるレベルの高騰はしていない印象があります。というわけで今回の目的にぴったりですね。
折角なので各部のデザインや構造を見ていきますが、その前に汚れの蓄積が凄いことになっているので清掃しました。汚すぎたので清掃前の写真はありません。
ステンレスバンドやバックルの関節部のようなブラシが届かない箇所を洗浄するために超音波洗浄機を使用します。愛用しているのはシチズンのSWT710です。もちろん専用の洗剤も使っています。

ただ、汚れが落ちるには落ちるのですが、微妙に残るときもあるので念のため事前に分解できる部分はすべて取り外し石鹸とブラシで洗浄した上で超音波洗浄機に投入します。

ケースはステンレスのカバーが付いた柔らかい樹脂製でペイントも落ちかねないので超音波洗浄機には投入しませんでした。

汚れが落ちない時があるとは書きましたが、やはり石鹸とブラシだけでは汚れは落ちきれてないようで黒いゴミが取れているのがわかりますね。

何回か洗浄を繰り返し、洗剤を水洗いで落としたあとは十分に乾燥させます。なんとなく洗浄前より輝いてるような気がします。

乾かしている間にケースもメンテナンスします。B-815は風防もプラです。流石に40年経つと傷が目立ちますね。プラなので根気良く研磨剤で磨きます。

折角なのでボタンもクリーニングします。ケース側のEリングを取り外すとボタンを抜くことが可能です。防水の記載はありませんがちゃんとボタンにパッキンが仕込まれていますね。
100m防水のカジキや200m防水のG-shockであればボタンの内側にバネが仕込まれていて複雑ですが、50m防水やそういった記載のないモデルはボタンだけがEリングが固定されているシンプルな構造です。(これが古いカシオトロンとかになるとまた構造が変わりますが……)
ボタンが効かなくなったりボタンが動かなくなったというのはこのボタンとケースの接合部に汚れが溜まったりオイルが固着したことが原因ということも多いです。

ボタンの汚れを除去したあとはシリコングリースを塗布して組み直し、続いて外しておいたモジュールを取り付けます。

きっちりと収まります。今回は片側2ボタンで分かりやすいですが、左右対称4ボタンの場合は向きを間違うと上下逆になったりするので注意が必要です。

次にシリコングリースを塗布したパッキンを設置します。

余談ですが使用しているグリースはSEIKOのものです(左はOリング用で右は汎用)。つまりCASIOの時計をCITIZENの洗浄機で洗ってSEIKOでグリスアップしています。

ここからは乾燥したパーツの組立です。裏蓋から取り付けていきます。古い腕時計だと蓋の裏に"H07/02/17"のように電池交換日時が描いてあったりしてエモいですよね(超音波洗浄すると消えますが……)。
さて、わざわざ全体的に洗浄した理由ですが、放置された汚れの中で錆びている可能性があるからです。実際、この裏蓋も汚れの蓄積がひどくサビが発生していました。

サビ自体は除去できましたが、サビの跡が鋳巣のようになっています。今回は表面上だけでしたが、進行していると普通に穴が開くし見た目も悪くなるのでキレイにするに越したことはありませんね。

裏蓋を押し込んでベルトをバネ棒で固定します。バネ棒も放置すると錆びて分解不能になって詰むのでこまめにキレイにしたいですね。

裏蓋は上下の爪で固定する簡易的なスナップバックです。一応パッキンはグリスアップしましたが、手を洗うときは気をつけたいですね。

関節部の清掃のためにバラしていたコマも組み立てます。ここも汚れが溜まりやすいので放置すると錆びて最悪穴が開きます。

最後にバックルも取り付けて完成です。

汚れも落ち、風防も磨いたのでかなりサッパリしました。
最後に各部を見ていきます。

ケースはメッキではなく、樹脂製ケースにステンレスのカバーがついています。後ろ半分は樹脂がむき出しなのでツートンカラーになっていいですね。
B-815の機能は非常にシンプルで時計とオートカレンダーだけです。豆球もアラームクロノグラフもタイマーも搭載されていません。


機能がシンプルなのでボタンも片面に2つしかありません。残った2つのボタンも頭が出ないデザインなのでかなりスッキリしたデザインです。

ボタンが飛び出たデザインの腕時計と並べてみました。やはりボタンがないとサッパリした感じになりますね。

折角なのでラウンドケースの腕時計とも並べてみました。
というわけでCASIOのB-815でした。G-Shockのようなごつい時計もいいですが、シンプルで小型の時計もいいですね。今回はここらへんで終わります。